原発を扱うモラルはありや。
2014-05-29


福島第一原発が爆発を起こした時、対策チームを率いる筈の東電のマネージャー達は、第一原発の線量の低いところで待機する旨の吉田所長の指示を無視して第二原発へ避難した。


原発に常駐し、情報交換や事故対策を担う筈の原子力安全・保安院(今の原子力規制庁)の保安検査官は第一原発に来なかった。


原発から5km離れたところにあるオフサイトセンターには、原発事故の際、10以上の省庁から40人超が集まり、原発や周辺自治体と連携して情報を収集・発信する拠点になると定められていた。甲状腺がんを防ぐ安定ヨウ素剤の配布指示でも大きな役割を担っていた。
それなのに、実際にはその半数強しか来なかった。班が7つ立ち上がり、それぞれが班長の指揮のもと作業にあたることになっていたのだが、班長が3月末近くまで来ない班もあった。


過酷事故の際に注水するために福島第一原発には3台の消防車が用意されていたが、1台は津波で破損、1台は構内道路破損のため原子炉に近づけなかった。1台は使える状況だったが、東電の社員は誰も消防車を運転したことが無かった。


東電から消防関係業務を請け負っている南明興産という会社の社員3名が、化学消防車1台と共に新潟の柏崎狩羽原発から福島第一原発に向かった。
第一原発に着くや否や、消防車を動かせるのは彼らしかいなかったから、放射線量の高い屋外で彼らは引き続き作業を行った。注水のための水を汲む場所はコロコロろ変わり、その作業を彼らはし続けた。


注水作業のためには、それ自体が高い放射線を放ち続けているがれきを撤去する必要があったが、そのために間組(はざまぐみ)が精力的に作業を進めた。
なぜ、間組が作業に当たっているのか吉田所長も理解していなかったしその時間も無かったが、間組は作業をし続けた。


最も大変な事態が進行しているときに、原発を操作できる唯一の組織である電力会社の社員が現場から逃げ出し、収束作業態勢を著しく縮小し、作業にあたる義務のない者が自発的に重要な作業を行った。現場に来ることが定められていた役人は来なかった。


例え、仮に原発が技術的に100%の安全を確保出来たとしても、その安全を現実にするには、それが完璧に運営されることが必要だ。その責を担う電力会社と役人のモラル、そして組織的・制度的な態勢が実質的に完備されていなければ、それは不可能だ。


21日の大飯原発差し止め訴訟において、関電は、「使用済み核燃料を保管しているプールが堅固な容器で覆われていない理由は何か」、との裁判長の質問に期日が来ても答えなかった。このような基本的な質問に答えないのはどういうことか、と裁判長が声を荒げて問うと慌てて、「プール自体が強固な構造物」と質問をそのまま返すような回答を返してきた。このようなことが何度もあったという。
そして判決の日。関電からは誰も出廷していなかった。


関電に、安全に対するモラルがあるか? 意識があるか?
この一事を見るだけでも、とてもそう思えない。
[社会・時事]

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